ロードバイクにパワーメーターを付けている方、付けていない方とも、踏み込む力をワット数で表現することは知っていると思います。
巡行している時100Wとか、300Wで上っているとか、プロは1000W以上を繰り返し出すとか、表現されています。
このワット数とは、どのくらいの力なのでしょう?
ローディの踏み込む力は、100W程度であれば、ある程度力を入れていることになります。300W出ていれば、かなり力を入れていることになります。
でも、人間の踏む力が、自分の体重以上になると、体(お尻)が持ち上がってしまいます。
50kgの人であれば、瞬間でも50kg以上の力を加えれば、身体が浮き上がってしまいます。
では、パワーを表すワット数の意味を、単位や計算式を使って考えてみたいと思います。
ちなみに、私はパワーメーターを持っていません。実際の情報と異なる場合があります。
また、以下の計算、単位は、イメージしやすくするために、数字の丸め、単位の省略(要するに、不正確な表現)を含んでいます。ご了解ください。
ワット数とは、仕事率を表す単位です。1秒間当たりのJ(ジュール、エネルギーの単位)です。
1Jは、102gの物体を重力下で1m持ち上げる仕事です。
また、1kgf・m/s = 約9.8Wという式があります。
kgf(重量キログラム)は、昔の単位ですが、重さ1kgの重りを乗せて重力がかかる力に近い値なので、私のような古い人間には、イメージがしやすいのです。ついでに、9.8Wも面倒なので、約10Wで考えてみましょう。
おおよそ10W=1kg ・m/s と仮定できます。
1kgf・m/sは、1kgの重さを1秒間に1m動かす力(正確には、仕事率)です。
これを、ロードバイクを漕ぐ力に当てはめてみます。
例えば、1秒間に1回転クランクを回すとします。ケイデンス60rpmのことです。
このとき、クランクの長さを170mmとすると、1周170mmx2x3.14=1067.6mmです。約1mです。わかりやすいですね。
例えば、1秒間で、1回転まわすことで、1kgの力が加わっていることになります。
おおよそ10W=1kg と言えます。それっぽい数字になってきましたね。
ということは、100Wというのは、10kgの力で170mmのクランクをケイデンス60rpmで回し続ける力のことになります。これは、1周ずーっと10kgの力をかけていることになるので、人が漕ぐときとはちょっと違いますね。人間は、踏み込むときに一番力が出ていますし、上死点、下死点付近では、力が弱くなっています。パワーメーターでは、平均を表示しているので、瞬間20kg、上死点下死点で3kgなどの時の値になると思います。
20kgというと、20kgのお米などを片足で持ち上げているイメージです。瞬間的ではありますが、結構な力です。
これが体重以上になると、お尻が持ち上がります。50kgの人であれば、瞬間的に50kgですから、ワット数で言うと300Wとか400W出ている時に起こるのではないでしょうか?
ようするに、そのくらいのワット数を出すと、うまく漕がないとお尻がぴょこぴょこ持ち上がるということですね。イメージもそんな感じではないでしょうか?
ダンシングはイメージがしやすいと思います。
完全に片足に全体重をかけることになります。50kgの人なら、50kg。100kgの人なら、100kgの力がかかります。初心者でも簡単に大きな力が掛けられます。ママチャリでも上り坂などで立ち漕ぎしている人はいますよね。
上から下までこの力がかかればすごいのですが、上死点、下死点では、クランクの円運動の接線方向(ペダルの移動方向)とは違う方向(重力の真下)にかかるのでロスは出ますが、50kgの人でも300W、100kgの人なら600Wくらいはかかっているのではないでしょうか?
当然ですが、体重の重い人の方が、多くの力がかかります。
では、体重の重い人の方が、ダンシングをすれば速いのではないか?となります。
でも、これにはからくりがあります。
ダンシングは踏み下ろすときに体ごと体重を乗せますが、踏み下ろした後の体を持ち上げなければなりません。自分の足で自分の体を持ち上げているので、当然体重の重い人の方が、持ち上げることはつらくなります。
ケイデンスが変わった時の計算はどうなるのでしょうか?
上の計算は、わかりやすいように60rpmで、ペダルの移動量1mとしています。ケイデンスは、よく90rpmがいいなどと聞きます。90rpmですと、1.5倍ですので、ペダルの移動量も1.5mになります。そうすると、同じ力でも1.5倍になるんじゃない?と思いでしょうが、パワーが同じと考えれば、ケイデンス1.5倍で、移動量が1.5倍になり、力はその分落ちます。
例えば、60rpmで、1mx10kgf=100Wであれば、90rpmは、100W÷1.5m=6.6kgfになります。2/3の力になります。
このことから、同じ力でロードバイクを進めている時、ケイデンスを上げていけば、その分力は少なくて済みます。その分多く回すので、どちらが良いかは、人それぞれということです。
今までの考え方で行くと、ケイデンス60rpmでは、1000W=おおよそ100kgfですが、平坦では大体110rpmとか120rpmで回すのではないでしょうか?120rpmとすると、おおよそ1000W=50kgfです。ケイデンスを上げて、この力で多く回すのですから、すごいテクニックと力ということになります。上りなどのケイデンスが落ちるスピードでは、もっと力を加えていると思います。
先ほどの話からすると、自分の体重以上の力を加えると、体が浮いてしまいます。自分の体重以上の力で踏み込むと、その分体が上に移動して、ペダルに力はかからないはずです。
では、どうして、体重60kg程度しかない選手が、60kgf以上の力を加えられるのでしょうか?
まず、強い力で踏み込むと、身体が浮いてしまうので、自然とケイデンスを上げて、踏み込む力を下げて対応しています。
それでも強く踏む場合は、踏み込む足の反対の足を引き上げています。
引き上げる足を固定するために、ビンディングペダルを使用しています。ビンディングペダルは、強く踏むために使用していることになります。
例えば、右足で踏み込むとき、左足で体が浮き上がらないように、引き上げます。もし、ビンディングペダルが無ければ、ハンドルにつかまるか、サドルをつかむかなどしないと、その力は失われます。もちろん、そんなことをすると危険なので、通常ビンディングが無いと、力が入りません。
ビンディングペダルは、体重以上の力を掛けたり、高速でペダルを回す時に、役割を発揮します。逆に言うと、それだけの力で踏めない人は、ビンディングは使えていません。(横にずれないように程度の働きはありますが、ギザギザペダルと、滑らない靴で事足ります)
もがくとか、スプリントをしない乗り方の人にとって、ビンディングペダルは必須ではないということですね。
ケイデンスが60rpmであれば、100Wのパワーの時、平均10kgの力で漕いでいることになります。
ケイデンスが90rpmであれば、100Wのパワーの時、平均6.6kgの力で漕いでいることになります。
ケイデンスを上げると、足にかかる力が減ります。
踏み込む力は体重との関係性が強くなります。
体重以上のパワーを出すには、体幹、足の使い方(ペダリング)などのテクニックが必要ということです。
パワーメーターを使用して、パワーの上がり下がりだけではなく、ペダリングの解析、身体の使い方に応用できると、練習の幅も広がると思います。(私も欲しいです)