栃木県の地元紙、下野新聞に、一つの記事が載りました。
栃木県は本年度、グルメや観光スポットを巡る、延長150キロ程度のサイクリングルートを県北地域に整備するという内容です。道路に案内標識を設けたり、休憩やメンテナンスが出来る場所を、県内全ての道の駅25カ所に設置するそうです。2025年度までに県内全域のルートも設定するそうです。
すでに県北地域では、矢板、大田原、那須塩原、那須の地域を周回するルートが整備されています。ただ、整備されているとはいえ、サイクリングコースを作り、お勧めスポットを記載したマップを作っただけのような気がします。
サイクリングイベントには、たくさんのサイクリストが集まります。各地域にサイクリングファンも多く、ロードバイクをもって、コミュニティを作っています。数は多くないですが、車で走っていると、時々ローディを見かけます。
そんなサイクリストは、どこを走っているのでしょうか?
走るところを探すことは、意外と難しいです。目的地がはっきりしている場合、最短コースを走る方が経済的ですが、サイクリングは経済性の問題ではなく、趣味の世界なので、景色が良く、走りやすく、快適であることを望みます。簡単に条件を上げてみると、
・車の通りが少ない
・道がきれいである
・道幅が広い
・自転車専用道路がある
・景色がきれい
・休憩場所や食料、飲食店、コンビニがある
・風の影響を受けにくい
などでしょう。
なかなかこういう道路が長距離整備されているところはありません。行ったことはありませんが、しまなみ海道は、サイクリストのあこがれのサイクリングコースです。きっと、景色、走りやすさと言ったファクターがそろっているのでしょう。(うーん、行きたい)
他には、琵琶湖一周コースのビワイチ、霞ケ浦一周のカスイチ、りんりんロードなどがあります。
しまなみ海道もそうですが、各自治体では、県内も他県からも人を呼んで、お店や宿を利用してもらうため、いろいろなイベントや施設の整備を行っています。
ただ、多くの自治体は、施設の整備は最初だけで、いつの間にかイベントは行われず、サイクルラックも邪魔で変なところに置かれて朽ちていることもあります。
税金を投入するには、地元に利益があり、使用する人と納税者ともにメリットが無いと成り立ちません。(予算も通りません)
百万円でも、大切な血税です。無駄には出来ません。投資して、町に利益が生まれるには?使う人が楽しめるにはどうしたらよいか?考えてみます。
しまなみ海道は、毎年多くのサイクリストが遠方より訪れます。イベントも盛況ですが、普段の日にも、たくさんの人が走りに来ますので、これは理想的な形です。週末やイベントの時だけでは、さすがに維持することは難しいです。自転車に乗ってサイクリングを勧めるCMもやっていますね。
ここの良い点は、先ほどの走りやすい道の条件がそろっています。
特に、景色がきれいで、瀬戸大橋を作るときに、自転車専用の道路も一緒に作ったことが上手くいったようです。
霞ケ浦は、今売り出しているところで、人を呼ぶためにいろいろやっています。
土浦駅にはPLAYatre土浦が出来、今年2020年3月に星野リゾートのサイクルホテルも完成して全館オープンです。このコロナ禍で、オープンを盛り上げることが出来ませんでしたが、サイクリストのための施設や設備がたくさん詰まっており、その中のりんりんスクエアには、食事や着替える場所、休憩やシャワーを用意してくれています。手ぶらでもOKで、電車で行って、レンタルサイクルで走って、シャワーを浴びて電車で帰ることもできます。
道も整備し、看板なども設置してくれています?平坦で走りやすく(風をもろに受け、景色も変わりませんが)、筑波山などの走りごたえのあるところもあり、都心に近いため、発展しそうな気がします。
彩湖やモリコロパーク、荒川・多摩川サイクリングロードは、人口が多いため、人がたくさん走っています。要するに、走る人は多いけど、走る場所が少ないということです。こういうところにサイクリングロードを作れば、たくさん人が走ってくれると思います。
逆に田舎に立派なサイクリングロードを作っても、サイクリング人口が少ないせいで、走る人が多くありません。都会と逆の現象です。
都会では、たくさんすれ違うので、なかなか挨拶なんかしていられないと思いますが、田舎では、すれ違うローディは貴重で、あいさつする人は多く、何なら休憩場所で話し込んでしまうときもあります。
海なし県に住んでいる我々には、非常にうらやましい、海に面した地域には、自然の資産がたくさんあります。
こちらは立派な山がたくさんありますが、あちらにも山はあります。こちらは、湖はあります。でも、海はありません。
景色もそうですが、海の幸、海産物は非常に大きな魅力です。今は、冷凍技術と交通網の発達で、新鮮なお魚は全国で食べられますが、やっぱり海に行くと、海の幸を食べたくなります。また、海の幸を食べに、わざわざ海に行きたくもなります。(わざわざ来てくれることが重要)
海なし県は、魚は鮎くらいです。山の幸(山菜、そばなど)もありますが、弱いですね。精進料理みたいです。おいしい魚、おいしい肉、おいしいスイーツは、人を呼びます。しかしそれは、海の近くだったり、都市部の方がたくさんあります。なかなか、山の方は、魅力的な資源を掘り出すことが難しいです。
日光などは、有名な観光地で、多くの観光客が訪れています。那須高原や、軽井沢も同じような感じで、いろいろなお店や飲食店があり、イタリアンやフレンチ、スイーツの名物店もあります。しかし、別にそこでなくてはならない理由があまりなく、お店であれば、都会の方が、たくさんあるでしょう。海へ行ったら海鮮丼が食べたいと思いますが、山へ行ったら、何を食べたい、食べに行きたいと思うでしょうか?
食べ物は、人をひきつけます。名物を作ることはどこでもやっています。やっぱり名物を持っているところは強いですね。
地形により、走りやすい道があります。また、走りやすい道が作れる地形にも、条件があります。
海沿いはどこでもそうではありませんが、ほぼ平坦な道があります。もちろん絶壁やトンネルやアップダウンもたくさんありますが、それほど厳しくなく、そこを超えれば海が見えます。
関東平野は本当にだだっ広い平野です。平らな道ならいくらでも作れます。おそらく自転車にとっては、大きすぎる平坦です。景色も単調になり、風ももろに受け、ロングライドには、ある意味飽きてしまいます。その辺へのサイクリングや初心者には走りやすいと思います。
では、山はどうでしょう。
サイクリストの中でも、ヒルクライマーという特殊な生き物は、山を好みます。そんな人にとって、山が多い場所は魅力的です。長野などはどこを走ってもヒルクライムです。
ただ、立派な道を作るにも限度があります。
険しい山は、広い道が作れません。峠のように通り抜けられれば、超える理由がありますが、行き止まりであれば、そこに特別な観光地でもない限り、行く理由がありません。
また、大雨などによって、がけ崩れや道路の陥没などが起こり、毎年のように通行止めになる場所もあります。とにかく、交通量の少ない割には、工事や維持に金がかかりすぎます。
2019年の台風19号の大雨などのせいで、かなりの峠やヒルクライムのメッカは打撃を受けました。
そして、初心者にとっては、ただの苦行であり、立ちはだかる壁です。数分も登れば、Uターンしてしまうでしょう。
地形だけではなく、道路の整備状況にもよります。行きたいところはあっても、そこへ行くまでにトラックのたくさん通る狭い道は走りたくありませんし、ガタガタの穴だらけの道も嫌です。迂回したくても道が無い。住宅地や迷路のような道で、わかりづらいなど、なかなかうまくいきません。
ナビなどに頼って、走る道を決めることもありますが、どうも思ったような道を選んでくれません。また、走りながらナビを見ることは難しく、いちいち止まって確認したり、迷いながらまた戻ったりと、これまたうまくいきません。
川の整備された土手の上には、サイクリングロードが作られます。気が付くと、自転車走行帯の青い帯や矢印が設置されている道路もあります。しかし、地方の多くのサイクリングロードは、草がたくさん生えていて走りづらかったり、自転車通行帯は、車が堂々と走ったり、路駐の場所に代わってしまっているところもあります。また、自転車通行帯は、距離が300mくらいしかないところもあり、何のため?と思ってしまう所もあります。
自転車を邪魔するものが多く、走る人がいなくなったのか、元々利用する人が少ないため、作っても利用されずに車が入ってしまうのか?どちらが先かはわかりません。
確かに、サイクリストがいない、呼ぶほどの魅力のないところに、立派な自転車道路を作っても、誰も来ません。逆に行きたくても、道路が走りづらい、車がたくさん通っていて危ないとなると、自然と行かなくなります。
人々が行きたい場所で、走りやすい道の両方そろって初めて魅力的なサイクリングコースになるのだと思います。
宇都宮にもサイクリスト専用の拠点があります。宇都宮駅には、宮サイクルステーション、ジャパンカップの森林公園には、サイクリングターミナルがあります。
でも、私は行ったことはありません。正直、入りづらいです。
自転車乗り専用ではないですが、一般の人が入りづらい雰囲気があります。サイクリストが行っても、レストランやカフェがあるだけであれば、それ以外の利用者が入りづらいものです。ロードバイクで自走している人は、レンタルサイクルも必要はありません。
文句を言うつもりはさらさらないのですが、私には寄る理由がないというだけです。ふらっと立ち寄ってもいいのですが、ご用件は?と聞かれても、別に用が無いので、答えようがないですね。
そんなわけで、私が良く利用するのは、道の駅です。一般の人も多いですし、何も買わなくても、気軽に立ち寄れるためです。休憩もできます。
今回の栃木県の道路整備も道の駅を拠点と書いてあったので、道の駅に、自転車乗りも便利な設備を作ってくれるというのであれば、とても便利かと思います。
でも、実は、道の駅はサイクリストを大歓迎というわけではなさそうです。
サイクリストは、お土産を買えないので、なかなかお金を落としてくれないとか、車を止めて自転車で行ってしまうので、駐車場も迷惑なのだそうです。
まぁ、それでも人が集まるところは、にぎやかになるので、それぞれウインウインの関係であることを期待します。
PLAYatreはどうなんでしょうね?そのうち、行ってみたいですね。
予算をせっかく取って、サイクリングロードを作りました。土手沿いに作るのはまぁ、比較的簡単にできますが、そこに行く目的が走るためだけになってしまいます。寄り道や休憩、観光をしたくても、土手を離れて探さなければなりません。
幹線道路などに、ブルーの矢印などで、自転車通行帯を作りますが、道幅が狭いところに無理やり作っても、車も迷惑しています。また、側溝のふたの上や砂利が溜まっていたり、斜めやデコボコになっていると、走る気にもなりません。もう、歩道を走らせてもらった方が、楽です。
サイクルイベントはどうでしょうか。最初は、やりたい人が集まって、一生懸命準備します。日程、場所、コースを決めて、内容や定員を決めます。地元に説明し、了解をもらいますが、ダメならコースや会場を変えなければなりません。いざ決まれば、警察や土木へ届け出を行い、募集の広告、支払いや申し込み方法を決めます。タイム計測なら、チップや機材を業者に頼み、ゼッケンや個々のサイクリストの管理方法などを考えます。ルートや道路封鎖などをするのに看板を立てたり、案内を出したりします。事前に参加賞や会場の準備などをします。これらの準備だけでも、スタッフやボランティアを頼みますし、当日は交通整理や受付、進行の人を頼みます。当日は朝から晩まで対応に追われ、会場の設営、受付、進行、トラブル対応、お店や飲食など業者調整、ボランティア対応、撤収などがあります。終わった後も報告、会計などと、とても好きだけではやっていける内容ではありません。
最初は頑張って何とか開催まで持っていき、2、3回やってくると改善やノウハウが蓄積してスムーズにいくようになるのですが、今度は、地元の人がめんどくさくなり、ボランティアも集まらなくなってきます。これが一番の問題のようで、せっかく少ない手間で開催できるようになり、参加者もリピーターとなって毎年来てくれたりするのですが、大体3年くらいで終わってしまうところが多いように感じられます。それ以上続くようであれば、基盤がしっかり根付き、参加者や地元にも認知され、伝統的なイベントへと昇格していくのかと思います。
ベテランのサイクリストは、勝手に自分の好きなように走ります。イベントが無くても一人で走ったり、山を登ったりします。
ただ、そういう人たちを見てしまうと、初心者は尻込みをしてしまいます。フィジカルのスポーツでもある為、初心者が慣れた人たちと同じ楽しみ方が出来るかというと、その差を埋めるには時間がかかります。そうなると、初心者は離れてしまい、やったことが無い人は、興味を持ってっくれません。
特にバリバリのレース志向や高額のロードバイクは、初心者が入れない理由にもなっています。ロードレースを見て、かっこいい、やってみたいと言って入る人も多いですが、それだけが楽しみ方ではないところを、ベテランの方や、サイクリングロードを作る人たちは考えなければなりません。道を作って空気入れを置けばよいかというと、そうではありません。
ロードバイクは、やれば必ずと言っていいほど、はまります。一般の人が興味を示すやり方、初心者に優しい道、施設を作ることが、サイクリスト人口を増やすきっかけになると思います。