昔のロードレースは見たことがありませんが、近年のロードバイクでは、スピードが出るようにエアロフレーム、ディープリムホイールなど、機材がかなり進化しています。
そのため、プロでもないホビーレーサーも、かなりスピードを出しています。初心者でも特に若い人は馬力があるので、大人顔負けの走りをします。
しかし、その進化は、安全性を伴っているのでしょうか?
UCI規制など、重量面では規制がありますが、これはフレームの強度を落とさないようにしているものです。
トッププロはハイスピードでのトレーニングを十分行いますが、ホビーレーサーが慣れていないスピードでレースすることは、非常にリスクがあります。
ママチャリに対して、ロードバイクはスピードが出せるように設計されています。
更に、ロードバイクの中でも、入門用に比べて、トッププロが乗る100万円を超えるようなロードバイクは、さらにスピードが出やすくなっています。
ロードバイクは、エンジン(人間)が重要で、鍛えなければスピードは出ないとか、デュラエースでもクラリスでも、乗り手次第とは言われていますが、実際パーツを替えていくと、スピードどんどん出やすくなります。
ひとつひとつは、0.5km/hとか、わずかなスピードアップですが、トータルで最高の機材をそろえてしまうと、私は機材で5km/hくらいは簡単に速くなると思っています。
入門用のロードバイクは、重さや機械抵抗、摩擦、剛性などで、同じパワーでもロスが多くなります。また、設計的に、40km/h、50km/h以上ではマシンが安定せず、加速できるように考えていないのではないでしょうか?
対して、100万円くらい出せれば、ツールドフランスに出るようなワールドクラスのプロ選手が乗っているロードバイクに近いものが買えますし、一般ローディでも結構持っている人がいます。
やっぱりレースバイクはスピードが出ます。設計が、40km/h、50km/hから安定して加速できるようになっていると思います。若い人はパワーがありますので、レース素人でも簡単にスピードが出て、上位争いに絡んでいきます。
ビギナー、初心者クラスのレースでも、スピードは上位クラスとそれほど変わらなくなっています。逆にビギナーの方が平均スピードが速い場合もあります。
それもこれも、機材の進化、高級機材の入手しやすさなどが要因となって、レースのハイスピード化につながっていると考えています。
ハイスピード化は、危険に直結しますので、懸念される部分でもあります。
今のレース環境や機材の進化が間違っていると言いたいのではなく、レースのルールや乗り手の技術が、機材に付いていってないのではないか?と思うのであります。
ホビーレースでもプロのレースでも、ユーチューブでの動画を見ると、かなりの落車があります。大規模イベントでは人数が多いので、落車は起こってしまいますが、少人数のクラス別のレースでも、毎レースと言ってもおかしくないくらい、落車が発生しています。
ほとんどは、擦り傷や打撲ですが、骨折や脳震盪なども珍しくなく、ドクターヘリが来ることも良くあります。機材も、キズ程度はよくありますが、壊れやすいパーツが破損したり、最悪はホイールやフレームがぼっきり折れたりします。レース会場で、割れたカーボンディープリムホイールもよく見ます。
レースが行われた後に、ツイッターで落車したという報告も必ずのように出てきます。単独落車もありますし、巻き添えを食ったという人もいます。
余裕のない人は、全開でふらふらになりながらスピードを出しているのですから、そこでやめる決心をしなければなりませんが、その判断が出来なかったり、若い選手は決断できなかったりして、大けがをすることになります。
ロードバイクは不安定な乗り物です。スケボーと同じように、曲芸に近いものがあります。バランスを取って走っているので、油断すると倒れます。
誰でも倒れたことはあると思いますが、その割にはヘルメットしかプロテクターは無く、首から下は裸みたいに薄いジャージしか着ていません。
また、他の競技が瞬発力やとっさの判断力で身体能力を競っているのに対し、ロードレースは肉体及び精神の限界に挑戦しているものです。
月に何十時間も反復的に練習することで、精神的にも肉体的にも持続力が増し、より長時間限界を維持できるようになります。そして対戦相手を限界まで疲弊させ、諦めさせる競技なのです。
このスピードの高い領域で、心も体もボロボロにし、もともと不安定な乗り物を乗っているのですから、横風が吹いたり、アスファルトの穴につまずいただけで、倒れてしまいます。
スポーツは興奮を楽しむものですが、命を懸けるものではありません。そこまで大げさではなくても、簡単に大けがをするのであれば、みんな辞めてしまいます。
また、これだけ事故を起こすのですから、対策や規制をしろという声は出てくるでしょう。
各レースでは、ケガの無いよう、落車の無いよう、無理をしない、安全第一というアナウンスはありますが、言っただけで改善するはずがありません。
コースも真っすぐでだだっ広いところであれば接触しないような気もしますが、スピードが出るため、何かあった時は大けがをします。
かといって減速用のシケインやカーブを作ると、テクニックの差で落車することもあります。
本当は1人ずつ走った方がいいのだと思いますが、タイムトライアルで一人ずつ走っても、落車します。
スピードが出ることが、一番危険なことです。スピードは2乗に比例して、エネルギーが増えていくので、スピードが2倍に増えると、体へのダメージは4倍になります。
落車時には滑るので、エネルギーがいっぺんに体へのダメージにはなりませんが、もし壁や電柱に激突したときは、すべてのエネルギーが体を攻撃します。
例えば、時速30kmの場合、ビルの3~4階からの落下になり、40kmの場合は、5階くらいからになります。時速80kmの場合は、14階に相当するので、生きている方が不思議です。
カーレースでも、安全対策はトップスピードを抑える事です。スピードが出なければ、自然と安全マージンは増えます。
そういう意味では、マウンテンバイクやシクロクロス、ヒルクライムなどは、比較的安全です。マウンテンバイクなどは走る場所で危険度は上がりますし、転ぶ頻度も上がりますが、スピードによる大けがはありません。
まずスピードが出ないようにすることです。F1もどんどんスピードが上がって危険になっていたので、エンジンを小さくしています。コーナーもハイスピードにならないように、細くてグリップしないタイヤになっています。
同じように、ロードバイクも、まず転がりの悪いタイヤにします。フレームの重さは最高速に関係ないので、一番効くのは、タイヤをマウンテンバイクの様に太くしてしまいます。
たとえば、300Wで漕いだ時に30km/hくらいしか出ないようにします。
シクロクロスは、路面が柔らかいので、太いタイヤを履きます。地面の転がりが悪いため、スピードは出ません。しかし、選手はかなり力を使っています。
それから、ぶつかった時に、簡単に倒れないようにします。重い方が倒れづらいですが、当たった方にはダメージが大きくなります。
ロードバイクは重心が高いので、倒れやすいです。ホイール径を小さくして、重心を下げるのが良いと思います。本当は、3輪や4輪にした方が、倒れづらくなります。
最後は、倒れたときにけがをしないようにすることです。
ヘルメットは頭だけですが、体もプロテクターを付けるべきでしょう。
競輪では、かなりの選手がプロテクターを付けています。いちいち大けがで休んでいては、仕事にならないからでしょう。
ただ、ケガをしやすいとわかっているのですから、一般の人こそ、プロテクターがあった方が安心です。
レースのコースですが、安全優先であれば、広くて真っ直ぐな、またはブレーキの必要がない大きなカーブで構成されたコースになります。
ただこうなってしまうと、スピードや体力だけの、テクニックのいらないレースになってしまいます。
しかし、下手に狭いコースだったり、一般道を使用したコースではグレーチングがあったり、狭いところがあると、危険だと言われ、評判は悪くなります。難しいところです。
個人的には、ロードバイクもテクニックを競えるレースがあっても良いような気がします。
いずれにせよ、楽しさを損なうわけにはいかないので、楽しく安全に走る方法を、もっと考えた方が良いのではないでしょうか?