ロードバイクのホイールは、大きくは、リム、ハブ、スポークの3つの部品から構成されています。
現在、完組ホイール(完成品で売っているもの)が主流で、手組は少数派です。コストの面で、大量生産される方が安いのでしょう。
そのため、大量に売るには、流行りのデザインになってしまいます。ハブはデザイン性はあまりありませんが、リムはハイトの高いディープリム、スポークは細くて本数が少ない方が、かっこいいとされています。
色々調べていると、スポークの本数を減らしたり、エアロ形状、アルミやカーボンなどの特殊素材など、挑戦的な仕様も多くあります。
しかし、これで本当に速くなるのか?耐久性や品質は大丈夫なのか?など、わからないことが多々あります。
リムは、乗り味に大きく影響される部分と言えます。スポークは気にしない人も多いでしょうが、素人には調整はハードルが高いものです。特に本数が少ないものは、1本当たりの役割、負担が大きく、プロでも調整が難しいものになっているそうです。
昔、なるほどと思ったのは、鉄筋コンクリートの話です。
コンクリートに太い針金を入れていますが、これは、コンクリートは圧縮に強く、引っ張りに弱い(重いものを乗せても(最悪割れていても)びくともしませんが、引っ張るとパカっと割れることがある)。
鉄筋(針金)は、押すとぐにゃっとなる(座屈する)が、ぶら下がってもちぎれづらい(破断しづらい)という、お互い逆の特性を利用しているそうです。
要するに、ひびの入ったコンクリートはよく見かけますが、鉄筋が入っているおかげでバラバラになることはなく、重いものを支え続けることが出来るということです。
スポークも針金です。鉄やステンレス、アルミ合金などが主流です。こんな、直径2mmや1.8mmの針金に、よく100kgもの人が乗っても大丈夫だなと思いませんか?
これも、針金が引っ張りに強い特性を利用しています。(吊り橋もそうですね)
私が考える、スポークの役割や動きを整理してみたいと思います。
先ほど話した通り、スポークは引っ張りは強いけど、圧縮に弱いことになります。
ホイールは、タイヤを介してリムが地面に着いています。
ハブがフレームに接続されており、自転車本体や人間の体重を乗せています。
つまり、人間と自転車本体は、ハブを介して、リムにスポークで吊られている形になります。
停止している時
止まっている状態では、ハブより上側のスポークが、フレームを吊り下げています。ハブより下側は、働いていません。細かいことを言えば、スポークはテンションを掛けられて、お互いを引っ張り合って釣り合っています。下側は、下方向に引っ張っており、人が乗ると引っ張る力が減る形になります。(座屈(曲がる)まではいきません)
図にすると、赤いところが特に吊り下げる仕事をしているところで、黄色も一応仕事をしています。
漕ぐとき、加速するとき
漕いでるときは、人間の足でペダルとクランクを回し、チェーンを介してスプロケットの付いたハブを回します。
ハブはものすごい力で回り、スポークを引っ張って、リムを回します。この時も、スポークを押して回すことはなく、引っ張るだけです。
図にすると、赤いところで引っ張りが発生して働いています。赤くないところは働いていません。
こうなると、赤いところだけでいいんじゃないの?となってしまいますが、赤いスポークだけですと、ハブを中心に維持することが出来ません。働くスポークと釣り合う為に必要です。
これだけでプロの選手のバカみたいなパワーを支えるのですからね。すごいですね。(私は半分の太さでいいかも)
上図は回転だけですが、実際は、先ほどの人間とフレームの重量がかかりながら回っています。
つまり、合体すると下図のようになります。紫が回しながら自重を支えています。
これが回転しながら、次々と隣のスポークに役割が映っていきます。想像できますか?
1回転する中で、どんどん隣のスポークに仕事が移っていきます。このとき、リムの重量ムラ(ホイールバランス)や、スポークのテンションにむらがあったらどうなるでしょう?
テンションのばらつきがあると、弱い部分で伸びて、フレームが下がりますよね。強いところで持ち上がりを繰り返すことになり、リズムよく隣に仕事が移らず、ハブごとフレーム本体が上下に揺れたり、振動したりしそうですよね。調整って大事なのかもしれません。
さて、私も持っているカンパニョーロのG3組み。これも興味があったので考えてみました。
それが下図です。
最初の24本スポークは、吊り下げが12本働いているのに対し、G3は、9~12本でやや少なめ。
加速時は、最初が12本で、G3は、引っ張り7本と、中央の7本も少し働いている感じですので、やはり少ない本数で負担が大きくなります。
3本平行の中央は、中心から放射線状に配置されていますが、スプロケと反対側なんですよね。スプロケ側の方が駆動力を伝えるのと、角度が付けられないので本数が多く、反対側は少なくてバランスが取れます。左右の話をするとややこしいので、やめます。
ブレーキした時、減速時
ブレーキ時ですが、リムブレーキとディスクブレーキで、考え方が違います。
リムブレーキだと、リムの回転を止めにいきますので、リムの回転数が落ち、スポークを介してハブの回転も落ちていきます。ただし、ハブは軽くて半径も小さく、慣性があまり働かないので、スポークの回転方向を止める働きは、無視していいほど小さいと思います。その代わり、タイヤが地面との摩擦力で進行方向に対して止まろうとしているので、まず、タイヤとホイールだけ止まろうという作用が働きます。そのあと、スポークを介してフレーム自体を後方に引っ張ります。ですので、スポークの働きは、フレームを止めようとする、進行方向と逆側の力が働きをします。
対して、ディスクブレーキですが、ディスクを介してハブの回転を止めます。これがスポークを介してリムの回転を止めにいくので、スポークは加速と逆の仕事をします。加速するときに休んでいたスポークの出番ですね。そのあとリムが止まろうとする力がタイヤに働き、タイヤとホイールが減速し、スポークがフレームを引っ張ります。
ここが決定的に、リムブレーキとディスクブレーキのホイール(スポーク)の考え方の違いになります。
フロントホイールですが、加速時は駆動する役割が無いので、常にフレームを吊るしているだけです。
ただし、ブレーキ時は、ディスクブレーキ用のフロントホイールは、スポークが減速のためにリムを引っ張るので、組み方がリアと同じクロス組みになります。
リムブレーキはそれがないので、クロスにする必要が無く、ラジアル組みとなっています。
スポークの重要性は半端ありません。ユーチューブで見た動画では、ホイールを買い替えたとき、すげーって思うのは、古いホイールはスポークテンションがへたっていたりバラバラになっているので、(テンションが調整されている)新品ホイールの性能が良いと勘違いするのだそうです。
スポークテンションを調整しなおすと、新品の性能がよみがえるのかもしれません。
ロードバイクは、単純な構造です。スポークもただの針金ですが、その働きは大変重要です。
コメント